『confession 1.』
ある日。
私は見てしまった。
皆から少し離れた木陰で、マーニャとクリフトが一緒にいるのを。
2人は2言3言、言葉を交わしたみたいで。
その後。
なんと。
マーニャがクリフトに抱きついた!
クリフトはすっごく困って、すっごく照れてて。
………。
なんか。
むかっ。
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またある日。
私は見てしまった。
やっぱり皆から離れた岩陰で、今度はミネアとクリフトが一緒にいるのを。
クリフトが何かを言ったみたいで。
その後。
なんと。
ミネアが泣きながらクリフトの胸に飛び込んだ!!
クリフトは優しく笑って、優しくなだめてて。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
な〜んか。
むかっっ。
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「姫様、少しお話があるのですが」
クリフトは何もなかったかのように話しかけてくる。
でも。
「……私にはないから」
何もなかったかのような態度が何故だかすっごくイラついて、私は話しかけられるたびにずっと避けていた。
……私なんでこんなにイライラしているんだろう。
ちっちゃい頃からずっと一緒にいた。
どんな時だってそばにいた。
呼べばいつだって飛んできてくれた。
呼ばなくたって、いてほしい時にはひょっこり現れた。
『幼馴染』。
『お友達』。
私は『姫』で、クリフトは『御付の神官』で。
マーニャやミネアと一緒にいた時の、クリフトの優しい笑顔がまた浮かぶ。
よく見慣れた、いつもの笑顔と同じだったはずなのに。
……私なんで、こんなに胸が痛いんだろう。
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そのうちにクリフトはマーニャやミネアと話す事が多くなった。
時にはすごく楽しそうに。時にはすごくしんみりと。
時々クリフトは「姫様」って声をかけてくれるんだけど、いつもだったら私も「何話してるの?」って気軽に行けるんだけど、何故かあの時の笑顔がちらついて、私の足と心を止めてしまう。
「用がないなら話しかけないで」
思ってもいない言葉を投げかけてしまう。
『違う、違うの、そうじゃないの。本当はそんな事思ってないの』
戸惑いと寂しそうな色が浮かぶ蒼い瞳を見ることが出来ずに、私は背を向けてその場から逃げ出してしまって。
そして、いつの間にかすっかり話をしなくなってしまった。
私は誰より知ってたはず、クリフトは誰にでも優しい人だって事。
そう、誰にだって暖かい人。
誰にでも。
誰にでも。
私じゃない『誰にでも』。
ズキ、と胸が痛む。
目が熱い。
気がついたら、涙が止まらなかった。
……私、なんで、泣いてるの……?
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「お前最近おかしいぞ。なにかあったのか?」
カイルに聞かれても答えが思い浮かばない。
「少し疲れが出ましたかな?」
ううん、違うのよトルネコ、そうじゃないの。
「何か悪いものにでもあたったか……」
ごめんなさいライアン、私もわかんないの。
「どうしたの?やっぱり少し休んだ方がいいんじゃない?」
「熱とかは無いようですけれど……いろいろありましたしね……」
マーニャとミネアの言葉に胸がズキ、と痛む。
心配してくれてありがとう、って思っているはずなのに、何故だかとても胸が痛かった。
クリフトは……何か言いたそうにしていたけれど、ふっと私から視線をそらす。
その瞬間、胸のズキズキがとても強くなった。
なんなんだろう、気を抜いたらまた泣きそう。でも私、なんで泣きそうなんだろう。
避けたのは私。
話さなかったのも私。
クリフトは悪くない。そう、悪くない。
悪く、ない………。
「……皆、すまぬが姫様はやはり少しお疲れのようじゃ。
皆も同じように疲れているのは重々承知じゃが、少し姫様を休ませてやってはくれぬじゃろうか」
ブライが皆に頭を下げる。
ゴメンねブライ……ぼんやりした頭でそんな風に思っていた。
私はパーティを外され、そのまましばらく馬車で寝かされる事になってしまった。